東京海洋大学練習船「海鷹丸」

市民講演会

日本地球化学会主催市民講演会
「海洋の未来を拓くために~持続可能な社会の実現に向けた海洋利用~」

(参加無料,申し込みも不要です)

本企画の趣旨

一般社団法人日本地球化学会では70周年を記念して、「持続可能な社会の実現に向けた海洋利用」をテーマとした市民講演会を開催します。この講演会では、地球環境や人間社会にとって重要な「海洋」に関する最新の研究動向の一端を紹介します。本講演会を通じて、地球環境の現在・過去・未来についての最先端の解釈を正しく理解してもらい、未来に向けた持続可能な海洋の利活用について意見交換することを目的としています。参加者は、中学生以上の生徒や一般市民、様々な研究を行っている地球化学者、海洋の環境計測を行っている現場の研究者・技術者などです。地球上の様々な現象・物質の化学的な計測(地球化学計測)を重要なツールとして研究を進めている日本地球化学会と社会とのつながりを強化するきっかけとなることを期待しています。

実施概要

 本講演会では、まず、海洋環境・再生可能エネルギー・環境工学で世界をリードする研究者らによる話題提供から始まります。話題提供のテーマは、(1) 海洋と環境を地球化学の手法で見た際の過去・現在・未来の変化、(2) 今後の地球温暖化問題を二酸化炭素回収・貯留技術で積極的に解決していく手法の現状と将来像の解説、(3) 海洋利用の現状と課題、の3つです。この後、高校生による研究発表会を実施し、最後にパネルディスカッションを行い、今後の海洋利用による持続可能な社会実現のために地球化学が果たす役割について会場の参加者とともに考えていきます。

日時

 2023年9月24日(日):10時~16時30分

会場

 東京海洋大学品川キャンパス 講義棟大講義室 (東京都港区港南4−5−7)

プログラム(予定)

1.研究者による話題提供

テーマ(1):過去及び現在の気候と海

  • 気候が変わる中で海はどう影響され、影響するか
        埼玉県環境科学国際センター 植松 光夫 総長

    人間の影響が大気海洋および陸域を温暖化させてきたことに疑う余地はないというIPCC第6次報告が示された。地球温暖化が海洋にどのような変化を与え、また海洋が地球環境へどのような影響を与えるのか。地球上で物質が循環しているということを通して、地球システムを俯瞰し、その対応、そしてその目指す将来を「国連海洋科学の10年(2021-2030)」の挑戦課題と関連づけて紹介する。

  • 瀬戸内海の水環境・生態系への気候変動の影響は?
        国立環境研究所 地域環境保全領域 海域環境研究室 東 博紀 主幹研究員

    かつては「瀕死の海」と呼ばれた瀬戸内海をはじめ、我が国の内湾・沿岸域の水質は改善傾向が見られ、富栄養化問題から脱却しつつある。しかし、生態系が豊かな海の再生はいまだ実感できず、近年はノリの色落ちや魚介類の不漁が全国で相次ぐなど、生物生産性の低迷が続いている。これは気候変動の影響なのだろうか?数値シミュレーションの予測で得られた知見を紹介する。

テーマ(2):二酸化炭素分離回収・貯留技術(CCS)の現状と課題(環境工学)

    東京大学 佐藤 徹 教授

CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)は、将来のクリーンエネルギー社会に移行するまでの橋渡し技術として、火力発電所など大規模排出源からCO2を回収し、海底下地下深くに封じ込める技術である。CCSに限らず、海洋における大規模技術の実施に当たって環境影響の検討は欠かせない。CCSの場合、リスクとして海洋中でのCO2漏洩がある。そこで、CCSの現状と課題を確認しつつ、CO2漏洩の環境影響を評価するための様々な数値シミュレーション法について解説する。

テーマ(3):洋上風力発電適地選定のための風を宇宙から理解する

    東京海洋大学 竹山 優子 准教授

世界的に再生可能エネルギー導入の機運が高まっており、日本でも2019年に再エネ海域利用法が施行され、洋上風力発電の本格的な導入が検討され始めている。安定した風速と風向が求められる洋上風力発電では、風車の設置場所が重要な問題とされている。本講演では、人工衛星観測による気候変動の様子や海上風の変化を実際のデータを示しながら解説するとともに、国内外の洋上風力発電のこれまでと今後の展望について紹介する。

2.高校生による探究研究発表

応募書類に基づいて選考された高校に研究成果を発表していただきます。各高校の発表は20分程度です。ご発表頂く高校及び講演者、講演タイトルは以下のとおり決定しました。

茨城県立緑岡高等学校 (江尻 梓海,佐々木 瑛音,宮本 直幸)「海洋性発光バクテリアの発光強度についての研究 〜電力削減に向けて〜」


東京都立科学技術高等学校 (増田 恵)「合成ハイドロタルサイトを用いた脱塩効果の検証」


創価学園創価高等学校 (木村 和樹,石若 裕子,石坂 美和)「相模湾の抱える課題を調査する」

3.パネルディスカッション「持続可能な社会の実現のために地球化学に何が期待されているか」 

 パネリスト

  • 埼玉県環境科学国際センター  植松 光夫 総長
  • 国立環境研究所        東 博紀 主幹研究員
  • 東京海洋大学         竹山 優子 准教授
  • 東京大学           佐藤 徹  教授
  • 東京海洋大学         下島 公紀 教授
  • 茨城県立緑岡高等学校     江尻 梓海
  • 東京都立科学技術高等学校   増田 恵
  • 創価学園創価高等学校     木村 和樹

 司会  牧田 寛子 准教授(東京海洋大学)

4名の講演者のほか、本講演会の実施・運営委員会代表の下島、各高校からの1名の高校生によるパネルディスカッションを行います。持続可能な社会の実現のために更なる海洋の利用を考える際、海洋学、環境学、工学など、さまざまな分野の研究者の協力が必要と考えられますが、化学、とりわけ地球化学的手法がこれらの有機的な結合に必要です。このテーマをめぐり、パネリストと会場の参加者の皆様との意見交換を行います。

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本件に関する問い合わせ先

企画・運営
日本地球化学会第70回年会実行委員会

委員長 下島 公紀
連絡先:東京海洋大学

〒108-8477 東京都港区港南4−5−7
電話:03-5463-0600(担当者:山中)
E-mail: t.yamanaka@kaiyodai.ac.jp